醜悪な大人たち

連日、某元アイドル兼女優の不祥事のニュースで盛り上がっているようですが、この件で一番被害を被ったのは誰だろう。事務所の社長?CMのスポンサー?ファン?どれも違うと思う。一番の被害者は子供だ。二親ともに覚醒剤所持、使用で逮捕され、取材という大義名分ではしゃぎ回るマスコミの狂奔ぶりを目の当たりにして、きっと深く傷ついているはず。親を含めた「醜悪な大人たちの姿」を彼は今どんな気持ちで見ているのだろうか・・・・。

ということをつらつら思っていた時、ふとある映画のことを思い出した。1979年に発表された、旧西ドイツの映画「Die Blechtromme (邦題:ブリキの太鼓)」だ。原作は1959年にGünter Grass (ギュンター・グラスW)が発表した3部からなる長編小説。それをニュー・ジャーマン・シネマの旗手Volker Schulöndorff (フォルカー・シュレンドルフW」)が第2部までを奇跡とも言える手腕で精密に映画化したものです。(余談ながら、小説原作の映画化でパーフェクトと思えるものは、オイラが観た映画に限ればこの「ブリキの太鼓」とアルゼンチンの作家、Manuel Puig (マヌエル・プイグW)」の「蜘蛛女のキス」ぐらいかなぁ。これは1985年にアメリカ・ブラジル合作で映画化されました)そして、その年のカンヌ国際映画祭パルム・ドール賞、アカデミー外国語映画賞を受賞している名作です。

この作品は1927年、ポーランドのダンツィヒが舞台で、醜悪な大人になることを拒絶し、自分の意志により3歳で成長を止めたオスカル少年の視点から、ナチス政権下のポーランドと彼を取り巻く大人たちの醜悪ぶりを時にユーモラスに、時にグロテスクに、時にエロティックに、時にシニカルに綴ったとてもシュールな作品。未見の方にとってはネタバレになってしまうので詳しいストーリーは書きません。興味のある方はまず原作の小説を読まれることをお勧めします。

オスカル役を演じた当時11歳のDavid Bennent (ダーフィト・ベンネント)が、母親のお腹から出てきたばかりの赤ん坊から3歳の少年 (映画では見た目は3歳だけど、最終的には21歳までを演じている)までを恐ろしいまでの怪演で演じきっています。この作品の映画化は彼なくしては決して成り立たなかったはず。 (また、おもちゃ屋の店主、マルクス役をフランス・シャンソン界の大御所Charles Aznavour (シャルル・アズナヴールW)演じているっ!)

今日は休日でしたが、台風の影響で雨が酷かったので久しぶりにこの作品をゆっくり鑑賞しました。初公開時 (またしても中学時代。でも、10代のガキンチョにははっきり言って難し過ぎた・・・)に観て以来、何度も観ていますがやっぱり今観ても凄い作品だなぁ。もしかしたら自分も子供の目線から見たら「醜悪な大人」に見られているのだろうか?とっても不安だ・・・。

大人たちは子供たちの良き「範」たるべき振る舞いを常にしなければ!と心に誓いました。

注:この映画には特にグロテスクな表現におけるリアリティ溢れる映像 (ウナギ釣りのシーン、オイルサーディンや生のままの魚を頭から丸かじりして食べ続けるシーンなど)が含まれています。これらのシーンは原作にも描かれてもおり、絶対に外すことは出来ない重要なプロットでもあります。でも、こういった描写が苦手な方は観られない方がいいかも・・・。

オスカル少年 醜悪な構図

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文庫版

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著者/訳者:ギュンター・グラス

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ISBN-10 : 4087600378

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新訳版

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ISBN-10 : 4309709648

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