蝶の舌~その静謐なる抵抗

Manuel Rivas (マヌエル・リバス)の短編小説「La Lengua de las mariposas (蝶の舌)」から3編を選び、José Luis Cuerda  (ホセ・ルイス・クエルダ)が映画化 (スペインでは1999年公開。日本は2001年公開)。スペイン内戦を扱った映画である。

時は1936年、スペインのとある小さな村が舞台。人民戦線解放派が総選挙で勝利し、クーデター勃発までのスペイン現代史において最も緊迫した時代に名優Fernando Fernan Gómez (フェルナンド・フェルナン・ゴメス、あの 「ミツバチのささやき」でアナのお父さんを演じている)演じるグレゴリオ先生、Manuel Lozano (マヌエル・ロサノ、この映画のために25,000人のオーディションで発掘された子役)演じるモンチョ少年との心の交流を描きながら、同国人同士が争うという「内戦」の残酷さをリリカルに、そして冷徹に描いた傑作だ。

物語はフィクションではあるけれど、内戦の勃発により昨日までは心を許しあっていた人達が、やむなく敵対しなければならないという悲痛なストーリーは現実には星の数ほど存在したはず。そしてその数だけ残酷な結末が演じられたことは想像に難くない。

この映画は場面場面がまるで一幅の絵画のような美しさに満ち溢れている。だからこそ、モンチョ少年が敬愛するグレゴリオ先生に罵倒を浴びせるあのラストシーンは心の奥底まで食い込んでくるような悲痛さ、残酷さを観る者全てに与え、涙を禁じ得ない。

だけどこの映画は「お涙頂戴」的な安っぽい作品では決してない。むしろ過度な演出を抑え、非常に淡々としている。やっぱりこういう映画はハリウッドはおろか日本では決して作ることは出来ないと思う。たくさんの人に観て欲しい映画です。

追記
音楽も非常に優れています。作曲を担当したのはニコール・キッドマン主演の映画 「アザーズ」でハリウッド進出を果たしたスペイン新進気鋭の映画監督Alejandro Amenábar (アレハンドロ・アメナーバル)です。ちなみに彼の監督第2作 「アブレ・ロス・オホス」はあのトム・クルーズが監督をした「バニラ・スカイ」としてリメイクされています。

追記:2014年6月12日
鈴木大介さんのギターソロ・アレンジによるメインテーマを演奏する井上仁一郎さん

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蝶の舌 [DVD]

販売元:アスミック( 2002-03-22 )

定価:¥ 5,076 ( 中古価格 ¥ 599 より )

Amazon価格:¥ 2,547

時間:95 分

1 枚組 ( DVD )



原作本です。

蝶の舌 (BOOK PLUS)

著者/訳者:マヌエル リバス

出版社:角川書店( 2001-07-13 )

定価:

単行本 ( 315 ページ )

ISBN-10 : 4048970186

ISBN-13 : 9784048970181


  1. これは公開時に映画館と、あと授業で観ました。
    こんなに哀しいラストシーンの映画はありません。
    哀しいのと同時に静かな怒りがこみあげてきました。
    純粋な少年の心の本当の叫びが聴こえてきてつらくなります。

    スペインの内戦はこの国に深く影を落としているんですよね。
    日本と同じでそれもどんどん風化していくのでしょう。
    スペイン内戦は多くのスペイン映画で避けて通れない黒い塊のようです。

    • Luzia
    • 2009年 9月 1日

    @Angelitaさん
    我々日本人がスペインに抱くイメージは「情熱の国」、「燦々と降り注ぐ陽光」、など明るいイメージがまず浮かびます。でも、特にあの内戦の悲惨さはやり切れません。。スペインに限らず、戦争というものは洋の東西を問わず悲しいものです。

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