伊勢さんのこと

伊勢昌之さん(1945-1995)というギタリストをご存知でしょうか。伊勢さんは正に知る人ぞ知る伝説のギタリストです。ジャズ系のギタリストとしても、また日本におけるボサノヴァ・ギターの草分け的な存在としても知られています。

実はうちの社長が古くからの友人ということもあり、生前はよくお店に来店されました。僕が初めてお会いした時は全く未知の方で、小柄で眼光鋭く、そしてボソッとした低いお声で「社長いる?」と言われた時は「すわっ!カチコミか?」と思ってしまったほど怖かったです・・・。でも、お話をするととても優しく、信じられないくらいピュアなお方でした。

若い頃はJoão Gilberto(ジョアン・ジルベルトW)を越える程の奇行家だったらしく、いつもハイミナールでラリっていたらしいですが、僕がお会いした頃は普通でしたね(笑)

伊勢さんの演奏の凄いところは誰も考えつかないような斬新なコードワークです。これを盗むために、伊勢さんがライブをやると錚々たるジャズ・メンやギタリストが聴きに来たらしいです。演奏中に「新しいコードを見つけた!」と叫び、指が届かない時は歯で弦を押さえるということもあったらしいです。(後述の筒井さんのエッセイに書かれています)でも、ライブをやるといっても調子が乗らなかったりすると演奏の途中で帰ってしまったりっていうことも度々あったそうです。こういうタイプの方なので、ライブやレコーディングなども計画的には行えず、それ故知る人ぞ知るギタリストっていう感じになってしまったのかもしれません。

ジャズ・ピアニストの山下洋輔Wさんが、「凄いギタリストがいるぞ」と紹介したのが作家の筒井康隆Wさんです。運良くライブを聴けた筒井さんは余りの素晴らしさにその場で弟子入りしてしまったそうです。そのことをエッセイ集「狂気の沙汰も金次第」の「ボサノヴァ」の項で書いていらっしゃいます。また、遠藤瓔子さん(作家の安部譲二さんの元奥様)の著書「姐さんママとラリな鬼才たち―青山ロブロイ物語」の中でも伊勢さんの奇行っぷりが紹介されています。(やっぱり天才です)

1995年2月、伊勢さんは突然逝ってしまいました。録音作業を終えた帰宅後、眠ったまま天に召されてしまいました。訃報を聞いたときはビックリしましたが、伊勢さんらしいなとも思いましたね。本当に妖精のようなお方でした。惜しむらくは生演奏を聴けなかったことです。一度でいいから聴いてみたかったなぁ・・・。

死後、「伊勢BAND JAPANISMO」、「GUITARIST MASAYUKI ISE」という2枚の貴重なアルバムがリリースされました。前者は日本の童謡をアレンジしたもの、後者はジャズとボサノヴァを演奏した未発表音源を集めたアルバムです。どちらも恐らく現在入手不能(2009年10月8日現在、ヤフオクで「伊勢BAND JAPANISMO」が\20,000近いプレミア価格になっておりました)かと思われますが、いやはやこれが聴けただけでも良かった!っていうくらい素晴らしいです。

伊勢さんのアルバム

筒井康隆さんの爆笑必至のエッセイ集!

狂気の沙汰も金次第 (新潮文庫)

狂気の沙汰も金次第 (新潮文庫)書籍

作者筒井 康隆

発行新潮社

発売日1976/10/01

カテゴリー文庫

ページ数489

ISBN4101171033

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様々な分野の天才、奇才が登場します。面白い!

姐さんママとラリな鬼才たち―青山ロブロイ物語SELECT

姐さんママとラリな鬼才たち―青山ロブロイ物語SELECT書籍

作者遠藤 瓔子

発行都築事務所

発売日2006-03

カテゴリー単行本

ページ数228

ISBN4396693230

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    • 吉井孝之
    • 2016年 11月 21日

    こんにちは。三本つくられた伊勢さんの7弦ギター(エレガット)の一本がうちにあります。伊勢さんの最後の弟子の方から譲り受けました。指弾きできないので弾いてあげられないのですが、伊勢さんの歴史を考えるとこのまま所持するよりは弾くかたのところに嫁がせた方がよさそうですね。アルバム探してみます。興味でてきました。

    • Luzia
    • 2016年 11月 22日

    @吉井孝之さん
    コメントをいただきありがとうございました!

    伊勢さん仕様の7弦ギターをお持ちなんですね。素晴らしい!3本しか作られなかったのは初めて知りました。貴重ですねぇ。

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