世界が認めた稀有な日本人クラシック・ギタリスト

「完璧」とか「完全」っていう言葉を普段何気なく使ってしまいがちだけれども、そんなもの本当は存在しない。音楽や楽器演奏に置き換えると「完璧な演奏」、「完全な音」なんてものが有り得ないように。だけど、ついついそういう言葉を使ってしまいたくなるクラシック・ギタリストがかつてこの日本にいました。

渡辺範彦Wさん、その人です。1947年生まれで8歳からギターを始めた氏は、1967年(19歳)にデビューリサイタルを行い、その「完璧」な演奏によって当時のクラシック・ギター界に大きな衝撃を与えました。そしてその3年後、21歳の時に第11回パリ国際ギターコンクール(ピアノにおける「ショパン国際ピアノコンクール」、ヴァイオリンにおける「チャコフスキー国際コンクール」に比肩する最高難度のギターコンクール)に出場し、満場一致かつ日本人ギタリスト初の第1位を獲得するという快挙を達成。それにより国際的にもその名を轟かせることになりました。

残念ながら、パリ国際ギターコンクールは1993年を最後に閉幕となりました。その長い歴史の中で、満場一致による優勝者は渡辺さんだけだったそうです。これが如何に凄いことかは想像に難くありません。(ちなみにこのコンクールで優勝した日本人ギタリストは他に、山下和仁さんと福田進一さんだけです)このコンクールの主催者であったRobert Vidal(ロベール・ヴィダル)氏は表彰式の時に、「諸君、帽子を取りたまえ。彼こそは真の芸術家だ」と壇上からスピーチしたことは語り草になっています。

渡辺さんは通常のギタリストとは違い、演奏するレパートリーを限定し、それらを極限まで磨き上げるスタイルを取りました。それ故、録音は極めて少ないのですが、残された貴重な音源は現在聴いても余りにも「完璧」かつ「完全」で驚かされます。

1990年頃から体調を崩されて実質的にギター演奏から遠ざかり、後進の指導に力を注がれました。そのため、若い世代のギタリストにとってはほとんど伝説のギタリストとして名を知られるに留まっていましたが、近年になって上述のデビューリサイタルの翌日に録音されたデビュー盤LPと、1971年に成蹊大学ギタークラブ第1回サマーコンサートにゲスト出演された際のライヴ演奏がCDとなって復刻されたこともあり、再評価の気運が高まっています。どちらも未編集のいわば「ダイレクト・カッティング」によるものとは俄かには信じ難い「完璧」な演奏です。

2004年に肺癌のため56歳という若さで他界。個人的に何度か生演奏を聴ける機会があったのにもかかわらず、遂に聴くことが出来なかったのはとっても残念です。

渡辺さんの十八番「S.L.ヴァイス/ファンタジー」の1986年のライヴ音源。この曲のギターによる演奏は無数に聴きましたが、渡辺さん以上の演奏を未だに聴いたことがないです。

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「フランシスコ・タレガ/エンデチャ・オレムス」の1976年のライヴ音源。もうね、筆舌に尽くし難い美しさです!

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未編集とは思えない完璧な演奏を堪能あれ。

デビュー!ファースト・レコーディング / 渡辺範彦 / CD ( Music )

インデーズ・メーカー( 2007-02-28 )

定価:¥ 3,024 ( 中古価格 ¥ 2,648 より )


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