30年の間にたった5作しか発表していない寡作作家、Thomas Harris(トマス・ハリスW)の作品の中でも、「The Silence of the Lambs(邦題:羊たちの沈黙)」は間違いなくサイコ・スリラーものの最高傑作だと思う。当時日本ではほとんど知られていなかった「プロファイリングW」という警察の捜査手法を個人的に知ったのもこの作品だった。
1991年にJonathan Demme(ジョナサン・デミW)監督により原作を忠実に映画化。題材が題材だけに、この手の作品はアカデミー賞からは最も縁遠いジャンルなんですが、第64回アカデミー賞において作品賞、主演男優賞、主演女優賞、監督賞、脚色賞という主要部門を総ナメにした。
これはジョナサン・デミ監督の知的で緻密な演出はもとより、主役のクラリス・スターリングFBI訓練生を演じた名女優Jodie Foster(ジョディ・フォスターW)の卓越した演技と、何と言っても天才的頭脳を持った精神科医かつ社会病質者であるハンニバル・レクター博士を演じたAnthony Hopkins(アンソニー・ホプキンスW)の神懸かり的演技が無ければ実現しなかっただろう。
若い女性の皮膚を剥ぎ、その遺体を川に遺棄するいう残忍な連続猟奇殺人事件(通称バッファロー・ビル)の捜査が難航し、ある時FBI訓練生のクラリスは上司であるクロフォード主任捜査官に特異な任務を与えられる。元天才精神科医であり、自分の患者を食したとして最高度の厳戒態勢で州立精神病院に収監されているハンニバル・レクター博士に会い、バッファロー・ビルの精神状態をプロファイリングさせよというものだった。レクター博士は、クラリスに子供時代の過去を語らせることを条件にバッファロー・ビルの心理を訥々と語り始める。それにより難航していた捜査は一気に核心に迫っていくが、一方でレクター博士は・・・。
といったストーリーなんですが、脇役的位置にあるレクター博士のほとんど神の領域とも言える深い洞察力と紳士的な語り口が非常に魅力的なんです。でも、そんな格調高い人間でありながら、カニバリズムW嗜好を持った異常者というギャップがもの凄く怖い・・・。
アンソニー・ホプキンスは大好きな俳優の一人なんだけど、とりわけこのレクター博士役は筆舌に尽くし難い名演技を繰り広げています。特に、別の場所に移監されたレクター博士を訪ねてきたクラリスとの掛け合いシーンは鳥肌が立つほど素晴らしい!レクター博士の顔が徐々にアップになっていくんだけど、その間ほとんど瞬きしないの。映画館で観た時はまるでオイラ自身がレクター博士に語りかけられているような錯覚に陥り、手に汗をびっしょりとかいてしまった。
この映画以降、日本のドラマや映画で明らかにパクリと思える作品が乱立。(あえて作品名は伏せますが・・・)まぁ、それだけこの映画(もちろん原作小説も素晴らしい)が傑作だからしょうがないか。
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