地獄のラスゲアード

Rasugueado(ラスゲアード)。いわゆるコードを「掻き鳴らす」奏法でっす。一般的にはフラメンコ・ギター特有の奏法と思われがちですけど、古くはバロック時代(バロック・ギターでは欠かせない奏法)から使用されている撥弦楽器ならではの奏法であります。もちろんフラメンコ・ギターにとって大変重要な奏法でもあります。

フラメンコ・ギターにおけるラスゲアードの弾き方は実に様々なヴァリエーションがあり、その意味では全ての撥弦楽器の中で一番複雑かもしれませんね。なのでラスゲアードをそれほど多用しないクラシック・ギタリストの方にとっては、例えば「ラスゲアード・ドブレ」(連続させるラスゲアード)なんかはとっても難しく感じられるようです。

で、ここからが本題。

純然たるクラシック・ギターの作品の中で「これでもかっ!」ってくらいラスゲアードてんこ盛りな作品があります。フランスの作曲家、Tristan Murail(トリスタン・ミュライユW)がRafael Andia(ラファエル・アンディア)というギタリストのために書いた「Tellur(テリュール)」っていう作品です。

ラファエル・アンディアはフラメンコ・ギタリストからクラシック・ギタリストに転向した方なんですが、特に前衛作品におけるギター演奏は筆舌に尽くせないほど素晴らしいです。彼のためにいくつも作品が書かれているんですが、その一つが前述の「テリュール」です。

かなり実験的な作品で、曲の大半がラスゲアード(単音でのラスゲアードもあるっ!)で構成され、2重&3重トリル、演奏しながらのチューニング変更など大変な難曲として知られています。それらが延々と続くので肉体的にも精神的にもかなりハードっ!

名前は出せませんが、何人かの著名なクラシック・ギタリストがこの曲に挑戦したものの冒頭部分で挫折したらしいです・・・。

フラメンコ・ギタリストにとっては、この作品に出てくるラスゲアードはそれほど難しいものではないです。ですが、この作品をもし演奏しようと思ったらかなり気合いを入れないとだめかも。実際、厳格な時間設定、図形なども用いられた楽譜なので暗譜不可能ということもあり滅多に演奏されません。

オイラが知る限り、ラファエル・アンディア以外のギタリストでこの曲を録音したギタリストはオランダのHughes Kolp だけだと思う。(でもちょっと誤魔化してるんだよなぁ・・・)日本では関西在住の金谷幸三さんがコンサートで演奏されています。(残念ながら未聴)

ちなみにこの作品は⑥=F、④=E♭とかなり特殊な変則チューニングを使用しており、更に途中で⑥をC♯までドロップ(演奏しながらっ!)します。

テリュール1 テリュール2 テリュール3

まぁ、万事がこのように「変態的」かつ「地獄的」な奏法を要求されるので大変っす。

残念ながらこの作品の楽譜は現在入手が難しい模様。(絶版の可能性あり)

つーか、誰も弾かねぇか・・・。

パリのLa salle Cortot(サル・コルトー)で「テリュール」を演奏するラファエル・アンディア。この超難曲をいともたやすく演奏しています・・・。

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【オマケ】
いやぁ、まさかラファエル・アンディア以外にこの作品を演奏している猛者がいるとは・・・。世界はなんて広いんだろうっ!フランスの作曲家、Phillipe Drogoz(フィリップ・ドロゴ)が、ラファエル・アンディアのために作曲した超前衛作品「Prélude á la mise á mort(死の儀式のためのプレリュード)」というもの凄いタイトルの作品でっす。演奏者はGonzalo Salazar(ゴンサロ・サラサール。初めて知ったギタリスト)というギタリスト。この作品は指定した場所に12本の編み棒を挿し込み、打楽器のマレットを使用して演奏します。いわゆる「プリペアド・ギターW」という手法を用いています。ギターによる「ガムランW」音楽ですね。

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