学生時代の一時期、澁澤龍彦W氏の著作にハマってしまったことがあり、その影響もあってMarquis de Sade(マルキ・ド・サドW)の著作も読んだりした。サド=SM[1]と一般的にはイメージされてしまうかもしれませんね。確かに彼の著作はかなり過激ではありますが・・・。でも、「奇著」という点では謎の日本人作家が書いたあの小説の衝撃度には敵うまい。それは・・・
沼正三W氏の「家畜人ヤプー」です。
1956年に「奇譚クラブ」という雑誌に連載された長編SF&SM小説という位置付けにある作品で、その後何度も加筆訂正され、現在は幻冬舎アウトロー文庫から全5巻で出版されているものが最終版ということになっています。
オイラが初めて読んだのは角川文庫版でしたが、まぁその世界観に付いて行くのが大変でしたわ・・・。
日本人留学生の麟一郎と彼の恋人であるドイツ人女性クララが主人公。ドイツの山中を旅行中の二人の前に、未来世界から飛来したUFOが墜落。UFOの中に乗っていたのは美しい白人女性だった。彼女を救出した二人はそのお礼に未来世界へと招待されるのだが、そこは日本人であるに麟一郎とって想像を絶する未来であった。
長大なストーリーなんですが、時系列的にはたった1日のお話。ですが、その1日の間に繰り広げられるストーリー展開があまりにも凄まじくて、さすがのオイラも読了後はかなり凹んだな・・・。ハッキリ言って白人に生まれてきたかったと・・・。
この作品が発表された当初、真っ先にこの作品に惚れこんで喧伝したのがあの三島由紀夫W氏であり、その後、渋沢龍彦氏、寺山修司W氏らも賞賛したため広く知られるようになりました。
また、沼正三氏は覆面作家であったため、その正体は一体誰なのかと様々な憶測がなされた結果、ますますこの作品の「奇著性」が高まりました。
沼氏の代理人として知られる天野哲夫W氏が実は沼本人という説もありますが、それも定かではありません。
誰が書いたものにせよ、異常なまでに高等な博識と偏執性を持って書かれたこの作品の価値=奇著性が下がることは今後もないと思う。
オイラ的には角川文庫版での終わり方が好きです。幻冬舎アウトロー文庫版でのこれ以降のストーリーはちょっと文体が変わって[2]しまっているのと、蛇足的な展開にちょっと馴染めなかった。
石ノ森章太郎Wさんや江川達也Wさんによってコミカライズもされていますが、この作品はやっぱり活字でこそ表現できるものだと思う。
映画化されるという話[3]もありましたが、多分不可能だと思う。っていうか、例の「あれ」や「これ」を一体どのように表現するの?とこの作品を読んだことがある方は思うはず。
しばらく読んでいないので、また読んでみようかな。
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