あるお婆ちゃんとの暗闘

学生時代にレギュラーでバイトをしていた例のスーパー(前回のエピソードはこちら)には「何でこんなに・・・?」っていうくらい個性的なお客さんが多かったです。でもオイラ的にはなかなか刺激的で面白かったのも事実。なので折りに触れて特に印象深かった方々について書こうと思いまっす。今回ご登場いただくのは一見すると全く普通の、どちらかと言えば“可愛いお婆ちゃん”系 のお客さん。いつも着物に割烹着という出で立ちでいらっしゃり、挨拶をすると目を三日月形に細めつつ微笑を返してくれるような方なんですが、彼女にはもう一つの顔がありました。それは、

「万引き常習犯」

としての顔です。

バイトを始めて間もないある日、いつものようにレジ仕事の合間に商品の補充をしていた時にこのお婆ちゃんがやって来ました。この時がお婆ちゃんと初対面。「いらっしゃいませっ!」と挨拶すると「こんにちは」と挨拶を返してくれました。

一通り商品の補充を終えてレジの定位置に戻り、何気にお婆ちゃんの様子を見ていたら持参の買い物かごには既にいくつかの商品が入っていました。まぁ、これは別に何の問題もない。そろそろお会計だろうなと思いつつ準備をしていたら、そのお婆ちゃんは堂々とオイラの前をスルーして出口へ。

「え”っ?え”ぇぇぇぇ~~~~っ!」

こ、こ、これってやっぱり万引きだよな・・・と一瞬の思考停止&フリーズ状態から覚醒しお婆ちゃんを追うオイラ。

オイラ 「お、お婆ちゃ~ん。え、ええとね。まだお会計が済んでないですよぉ」
お婆ちゃん 「え?だって私は何も買っていないもの。だからお会計する必要はないでしょ?」
オイラ 「・・・。は、はい?」
お婆ちゃん 「だから、私は何も買ってないでしょ?」
― (確かに何も買っていないのだが・・・)―
オイラ 「お、お婆ちゃん。でもほら、買い物かごに商品が入ってるでしょ?」
お婆ちゃん 「あらやだっ!いつの間に。あなたが入れたの?」
オイラ 「・・・・・・・・・」

と、こんな感じで路上で寸劇を演じていたら社長が血相を変えて走って来ました。そして信じられないことを言い放ったのだった。

「○○さん、いつもご利用頂きありがとうございます。お気をつけてお帰り下さい」

「え”っ?」 今度こそ本当にフリーズするオイラ。もう何が何だかさっぱりわからん・・・。

実はこのお婆ちゃんはすぐご近所に息子さん夫婦と同居されている方だったんですが、いわゆる「認知症」を患っていらしたのです。で、その症状の一つが罪無き「万引き」であり、この件はご親族とお店の間で暗黙の了解が数年前から得られていたというわけです。当日中に親族の方が必ずお会計を済まして下さるのでお店の被害は全く無いのでした。

こういうお客さんがいらっしゃることがオイラに伝わっていなかっただけなんですけど、ほとんど“どっきりカメラ”のようなシチュエーションにマジでクリビツテンギョウ。

バイトをしていた4年の間には数え切れないほどこのお婆ちゃんとの暗闘は続きましたが、基本的にはとっても可愛いお婆ちゃん(2005年に逝去された女優の原ひさ子Wさん的と言ったらお分かりでしょうか?)だったので楽しかったな。

あの当時70代後半でいらしたので多分もう身罷られていらっしゃると思う。今では良い想い出です。

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