若気の至りPart2~お客さんと大喧嘩、そして・・・

客商売で一番やってはいけないこと。それはお客さんとトラブルことであろう。ましてや「喧嘩」をするなど言語道断である。が、現在の会社に入社間もない頃、あるお客さん(以降、Hさんと呼びます)と大喧嘩をしてしまった・・・。電話越しではあったけれど、お客さんを「怒鳴りつける」という暴挙を犯したオイラがクビにならずに現在に至っているのはなぜか?

Hさんは大阪在住。不動産業を営むギター愛好家で、当時60代の方でしたが特に現代音楽が好きという非常に珍しいお客さんだった。

Hさんから初めて電話がかかってきた時のことは今でも鮮明に憶えておる。

「大阪から電話してるんやけど、すぐかけ直してや」

おおぉ・・・。実に大阪の人らしい。(わかりますよね?)

で、すぐかけ直すと「ワシHというもんやけど、あんた楽譜に詳しいか?」と仰る。まだ、入社したてで楽譜の知識は余り無かったのだけど何とか対応すると妙に気に入られてしまい、その後頻繁に電話がかかってくるようになった。

電話がかかってくるのはいいんだけれど、とにかく長いんですわ。短くて30分、長いと2時間近く喋りまくるの。で、話し方&声音がやっさん(=横山やすし師匠)にクリソツなのである。

「○○君。あんた△△の××って曲知ってるか?」

知りませんと言ったら最後、延々とその作曲家と作品について語り出す始末。しかも、やっさん口調で・・・。オイラも調子に乗って「いやぁ~、Hさんのお話は勉強になりますぅ」なんておべんちゃらを言ってしまうものだから、ますます電話がかかってくる頻度が高まってしまった・・・。もちろん、こちらからかけ直してね。

とは言っても、Hさんばかりを相手にするわけにはいかないのであり、オイラのストレスは自分でも気付かぬうちに限界ギリギリまで溜まっていったのだった。

ある日、オイラが別のお客さんを接客中にHさんから電話がかかってきた。電話に出た他の社員が「後でかけ直させます」と応対したのは良かったのだけど、思いのほか接客に時間がかかり、Hさんに電話をかけたのはそれから2時間後ぐらいになってしまった。電話をかけると開口一番、

「オイ○○!お前ワシを何時間待たせるんやっ!」

と怒鳴られた。で、オイラは少しカチンときてしまい嫌みっぽく「Hさんだけが私のお客さんではありませんのでお許し下さい」と言い返した。

「○○!お前それが客に対する態度か、ゴルァ!」

と罵倒が始まった。売り言葉に買い言葉でお互いどんどんエスカレートしてしまい、結局オイラが

「もう二度と電話してくんな、ボケェ!」

と怒鳴りつけて電話を切ってしまった・・・。

その時点でクビは覚悟していたんだけど、Hさんが社内でも「電話魔」であることは知れ渡っていたので厳重注意程度で済んだのは幸いだった。

ただオイラ的にはとても後味の悪い結末であり、自己嫌悪に苛まれたのも事実である。が、翌日Hさんから電話がかかってきた・・・。苦虫を噛み潰しつつ電話に出ると、

「○○君・・・昨日はすまんかった・・・」

と、もの凄く優しげなやっさん口調なのだった・・・。オイラも非礼を詫び、その後いろいろお話をして円満に和解出来た。

ある日、小柄だけど妙に貫禄のある方が来店された。Hさんだった。Hさんはオイラを見ると、

「○○君!ええ身体しとるなぁ。」

と、やっさん口調(生)でおっしゃるのだった(笑)。

「そうそう、○○君に土産を持ってきたんや」

と差し出したものはHさんの手書き楽譜だった。これが本当に見事な楽譜で、そのまま出版してもおかしくないくらい高クオリティなのさ。その旨を話すとHさんは若い頃にあるジャズ・バンドに在籍しており、当時一番若かったために雑用兼楽譜書きを散々やらされたのだということを訥々と語り出した。

その後、Hさんとは意気投合してしまい大切なお客さんの一人になったのだった。

しかし、5年後。全く音信不通になってしまった。「病気で入院されてしまったのか?」、「まさか・・・?」と気を揉む日々が続き、1年後くらいに思い切って手紙を書いたら宛先不明で戻ってきてしまった・・・。

結局未だに連絡が取れません。あれから20年近くなるので再会は難しいかもしれないなぁ・・・。

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