クラシック・ギタリスト、渡辺範彦さんのことは以前ご紹介しましたが(こちら)、先月末に大変レアな未発表音源CDが発売されました。このCDは是非、ジャンルを問わず多くの方に聴いていただきたいっ!特に渡辺さんが、1969年「第11回パリ国際ギターコンクール」に出場し、審査員満場一致で第1位[1]を受賞した際の「歴史的演奏」を41年という時を経て聴けるという幸せ・・・。国内外を問わず、最近の若手ギタリストはみんな“巧い”ですが、それだけでは真のヴィルトゥオーゾにはなれません。それを実感することが出来るこのCDは、全人類的お宝必聴盤中の必聴盤であります。
“パリ・ライヴ録音集 コンクール&リサイタル:1969,70&76”
- ダウランド/幻想曲
- ポンセ/ソナタ第3番より第2楽章
- ポンセ/ソナタ第3番より第3楽章
- タンスマン/マズルカ
- ダウランド/パイパー船長のガリアード
- ダウランド/メランコリー・ガリアード
- ダウランド/ハンソン夫人のパフ
- タンスマン/組曲「カヴァティーナ」前奏曲
- タンスマン/組曲「カヴァティーナ」サラバンド
- タンスマン/組曲「カヴァティーナ」スケルツィーノ
- タンスマン/組曲「カヴァティーナ」舟歌
- J.S.バッハ/組曲第4番 ホ長調 BWV1006aより前奏曲
1~4:「1969年第11回パリ国際ギターコンクール本選での演奏」
5~11:「1970年第18回パリ国際ギターコンクール客演での演奏」
12:「1976年国際ギター・フェスティヴァルでの演奏」
コンクールの音源は渡辺さんのご遺族が2004年にパリを訪れ、パリ国際ギターコンクールが行われたRadio France(ラジオ・フランスW、旧フランス国営放送)内にあるメシアン・ホールを見学した際、対応された女性職員の粋な計らいで聴けたのだそうです。
この音源と翌1970年の客演時、1976年のフェスティヴァルでの演奏音源は現在パリのL’Institut national de l’audiovisuel(INA、フランス国立視聴覚研究所W)に保管されており、今回このメモリアルCD制作のために快く提供して下さったとのこと。
渡辺さんは「これ」と決めた楽曲をとことん弾き込んで磨き上げる方でしたので、レパートリーは決して多いギタリストではありません。しかし、その磨き上げられた楽曲は「もうこれ以上は無い」と言うほど完成度が高い奇跡的な演奏であり、このCDがライヴ録音であることを忘れさせます。
ギターという楽器は他の楽器と比較すると大変ミスが目立ちやすい楽器で、コンクールやコンサートに足を運ぶと演奏者はもとより、聴衆も緊張感を強いられるのが常ですが、渡辺さんのギター演奏はそれを全く感じさせないどころか、聴衆に音楽的感興を与えてくれる稀有なギタリストであったことに異論を挟む方はいらっしゃらないと思います。
渡辺さんは正真正銘の「ヴィルトゥオーゾ」でありました。(至福)
- パリ国際ギターコンクールは1993年に閉鎖されましたが、その35年の歴史の中で審査員満場一致で第1位を受賞したのは渡辺さんが唯一。 [戻る]
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