まだLPレコードの時代、僕が心から尊敬するクラシック・ギタリストの山下和仁Wさんが、日本の作曲家によるクラシック・ギターのためのオリジナル作品を集めた「モダン・コレクション」という渋いアルバムをリリースしました。その頃はまだ現代音楽に全く興味が無かったのですが、収録曲を見るとかの世界的ジャズ・ギタリストの渡辺香津美さんの名前があってビックリした記憶があります。
なぜなら、このアルバムには武満徹Wさんの「Folios(フォリオス)」、吉松隆さんの「Litmus Distance(リトマス・ディスタンス)」、野田暉行Wさんの「Intermezzo(インテルメッツォ)」という日本を代表する世界的な作曲家のギターソロ作品が収録されており、そこにジャズ・ギタリストの渡辺さんの名前を見出すとは夢にも思わなかったからです。
曲のタイトルは「Astral Flakes(アストラル・フレイクス)」。山下さんのために書かれた純然たるクラシック・ギターソロ作品です。また、渡辺さんにとって初めてのクラシック・ギター作品でもあります。
曲名からジャズっぽい作品を連想したのですが、完全にクラシック作品であり、誤解を恐れずに言えば20世紀中に書かれた日本人作曲家によるクラシック・ギター作品の傑作だと思います。僕もすっかりこの作品の虜になり、自分でも弾いてみたくて楽譜を探したのですが見つかりませんでした。
それもそのはず。楽譜はこの作品が発表された1982年から13年後の1995年にようやく出版されたのでした。
山下さんのために書かれた作品ということもあり大変な難曲です。僕が知る限り2010年現在、この作品を録音をしているのは山下さんの他に福田進一さん、大萩康司さんだけです。[1]
出版譜の校訂、運指を担当された福田進一さんが楽譜の序文に
まるで透き通るように美しく、ひとつひとつの星が個性的な輝きを放つ、厳しい真冬の星座。その広大な空間をギターという魔法の箱に封じ込めた「アストラル・フレイクス」~後略
と書かれていますが、この曲の魅力を余すところなく表現された名文だと思います。
この作品はクラシック・ギターが存在する限り弾き継がれていくでしょう。
【追記】
「アストラル・フレイクス」のⅡが作曲されるらしいです。
【2017年10月25日追記】
本日リリースされた松田 弦さんのアルバム「everGrEeN」に「アストラル・フレイクス」が収録されました。
- コンサートで演奏されているギタリストは多いようですが・・・。 [戻る]
最近この曲にハマっている者です。
そういえばこの曲youtubeなどにも全く演奏がないように思えますがもっとたくさんの人に知ってもらえたらいいですよね。
最初は渡辺さんの作品として正直受け入れ難かったんですが何度も聴くうちにとてもかっこいい曲だと思えるようになりました!
@おばたくさん
そうなんです。なぜか“アストラル・フレイクス”ってYouTubeの動画に全然無いんですよね。確かに難曲ではありますけど、もっと弾かれていい名作だと思います。
10月25日にフォンテックからリリース予定の松田 弦さんの新譜、“everGrEeN”は日本人作曲家の作品(編曲を含む)によるアルバムなのですが、“アストラル・フレイクス”も収録されています。
アルバム・タイトル曲であります佐藤弘和さんの“Evergreen”という作品のPVが公開されております。