深沢七郎Wさんと言えば『楢山節考』であり、1958年に名匠・木下惠介W監督により映画化され、1983年にはこれまた名匠・今村昌平W監督により2度目の映画化がなされ、なんとその年のカンヌ映画祭でパルム・ドールを受賞してしまった名作であり、そんな深沢さんが実はクラシック・ギタリストであったことは知られているようで意外に知られておらず、なんとLPレコードも発売されている本格派であったことは実に驚きだ。
“祖母の昔語り~1973年”
- 小栗孝之/紡ぎ唄
- 小栗孝之/くちなしの花
- 小栗孝之/噴水
- 平山英三郎/断章
- 武井守成/祖母の昔語り
- 武井守成/落葉の精
- 武井守成/軒訪るる秋雨
- 武井守成/夕焼
- 深沢七郎/楢山節
※9曲目は弾き語り。それ以外はギター独奏曲。
クラッシク・ギターの世界では周知の事実ですが、深沢さんのギターに対するのめり込み具合は半端ぢゃありません。このアルバムは1973年に発売され、2003年にCDに復刻されたものであります。恐らく現在は入手が大変難しいかと思われます。
オイラはこのアルバムの存在すら知らず、たまたま普段懇意にしていただいているお客様からプレゼントされて知った次第です・・・。
小栗さん、平山さん、武井さんという日本のクラシック・ギター界の黎明期に活躍されたギタリスト作曲家の小品に、深沢さん自身の作詞・作曲による「楢山節」という構成です。
正直言って現在のギタリストのレベルと比較するのは酷ですが、1曲1曲を慈しんで演奏されているのがヒシヒシと感じられれます。聴きものはやっぱり小説の作者自身による「楢山節」でしょう。これが聴けるだけで何も言うことはございませんぬ。参考までに歌詞をご覧下さい。
夏はいやだよ道が悪い
むかで長虫やまかかしかやの木ぎんやんひきずり女
あねさんかぶりでねずみっ子抱いた(※)塩屋のおとりさんが運がよい
山へ行く日にや雪が降るお父っちゃん出て見ろ枯木が茂る
行かざなるまい、しょこしょってなんぼ寒いとって綿入れさ
山へ行くにゃ着せられぬ楢山祭りが三度来りやよ
栗の種から花が咲く(注:小説では「あねさんかぶりで」が「せがれ孫から」となっています)
オイラは今村昌平監督の映画が強烈な印象として残っているので、あの姥捨て山のシーンが思い出されてしまいます。
こういうレアな音源がある時ひょっこり現れるから侮れませぬ。大変いいものを聴かせていただきましたっ!
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