夏がくれば思い出す

と言っても、“はるかな尾瀬”でも“遠い空”でもなく「火垂るの墓」なのであります。原作は野坂昭如氏の1967年に発表された短編「アメリカひじき・火垂るの墓」で、同年直木賞を受賞されたことは皆さんご存じでありましょう。文体が非情に独特で、正直言って初めて読んだ時は大変疲れた・・・。なので、この作品がアニメーションになるという噂を耳にした時は大変驚いた記憶があります。しかも、宮崎駿監督作品の「となりのトトロ」との二本立て。公開は1988年でありました。

確か、公開初日に観に行ったと思います。偶然、「火垂るの墓」が始まる時間でした。

参りました・・・。原作も救いの無いストーリーですけど、アニメーション版は更に拍車がかかっており、どう考えても子供向けの内容ではなく、僕はあまりの切なさに号泣してしまいました。

この作品はお涙頂戴ものの反戦映画では決してありません。少なくとも僕がこれまで観た映画の中で最も残酷で美しい作品だったかもしれません。

一応、原作者の野坂さんの実体験に基づくストーリーとは言え、アニメーション版ではオリジナルの脚色も随所に加えられています。

ドラマ実写版、近年では2008年に映画実写版も公開されていますが、アニメーション版における残酷さ、切なさには及ばないと思います。

特にアニメーション版は主人公である清太と節子に待ち受ける過酷なまでの現実と、詩的で美しい描写(螢のシーンなど)の差が際立っています。

この作品の残酷さは執拗なまでの“対比”だと僕は思っています。すなわち、“生者と死者”、“富者と貧者”などです。

ラストシーンは今観ても大変衝撃的ですが、僕が一番衝撃を受けたシーンは実はラストではなく物語後半、疎開先から戻ったお金持ちのお嬢様らしき人物が久しぶりに戻った家でくつろぎ、蓄音機で「Home, Sweet Home(邦題:埴生の宿)」をかけるシーンです。このシーンの残酷さ、美しさは筆舌に尽くし難い・・・。

この家の前には大きな池があり、その対岸にある防空壕に自立して必死に生きようとする清太と節子が住んでいるわけです。一方は戦争の終結とともにこれから訪れるであろう平和な未来を予感させ、一方は今日一日の糧を得るのにも難儀している未来無き兄妹・・・。しかも、節子は栄養失調で餓死寸前という過酷すぎる現実・・・。その間に流れる「埴生の宿(=楽しき我が家)」の美しき調べ。監督の高畑勲W氏に畏怖の念を禁じ得ません・・・。

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Luzia

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