シニカルな笑いに込められた服わぬ勇気

一体この映画を何度観たことか・・・。初めて観たのは小学校の5、6年生だったんじゃなかろうか?しかも、課外授業の一環で葛飾公会堂(現在のかつしかシンフォニーヒルズ)で鑑賞したのだと思う。二時間を超える大作、しかもモノクロ映画。まだまだ子供のオイラにとっては深い部分までは理解出来ないまでも大変感動し、その後現在に到るまで折に触れて観ている名作であります。その映画とは、Charles Chaplin(チャールズ・チャップリンW)の“The Great Dictator(邦題:独裁者)”であります。

スンマセン・・・。またチャップリンです。でも、しょうがないんです。大好きなんで・・・。

1940年に発表されているんですが、日本では政治的な理由で公開されたのはなんと20年後の1960年です。前作、“Modern Times(邦題:モダン・タイムスW)”は1936年の映画です。当時既にサイレント映画は過去の遺物となりトーキーW全盛だったのにもかかわらず、チャップリンはサイレントにこだわりました。が、4年後に発表された“独裁者”は完全トーキー作品であります。あれほどサイレントにこだわったチャップリンがしゃべりまくっています。

転換の最大の理由は、皆さんご存知のとおりラストのスピーチ・シーンのためであることは言うまでもありません。チャップリンはどうしても世界に向けてあの演説を発表しなければならなかった・・・。

まぁ、あの演説シーンはやり過ぎという意見も多々あるわけですが、Adolf Hitler(アドルフ・ヒトラーW)によるナチ党全盛期に服うことなく、面と向かって自身の思いの丈をぶつけた勇気はちょっと真似は出来ませんね。長いですが訳文を掲載しましょう。

・・・申し訳ないのですが・・・私は皇帝になりたくはありません。支配もしたくありません。できれば助けたいのです、ユダヤ人も黒人も白人も・・・人類はお互いに助け合うべきです、他人の幸福を念願にして、お互いに憎しみ合うべきではありません。

世界には人類を養う財産があります。人生は自由で楽しいはずなのに、貪欲が人類を毒し、憎悪をもたらして、悲劇と流血を招きました。スピードも意志を通じさせない機械は貧富の差を作り、人類は知識を得て懐疑的になりました。そして思想だけが優位に立って感情が犠牲になり、人間性が失われてしまいました。知識より思いやりが必要です。思いやりがないと暴力だけが残ります。航空機やラジオは私たちを接近させ、人類の良心に呼びかけて世界をひとつにする力があります。

私の声は全世界に伝わり、失意の人々にも届いています。皆さん失望してはいけません。貪欲は姿を消し、恐怖もやがて消え去り、独裁者は死に絶えます。私たち大衆は再び権力を取り戻し、自由は決して失われません!

兵士の皆さん、犠牲になってはいけません。独裁者の奴隷になってはなりません!彼らはあなた方を欺いて犠牲にし、家畜のように追い回しています。彼らは人間ではありません!心も頭も機械に等しい!

皆さんは機械ではありません!心に愛を抱いてる、人間です!愛を知らない者だけが憎み合うのです!さあ、独裁を排し自由のために戦いましょう!

聖書のルカ伝17章にはこう書かれています。“神の王国は人間の中にある”すべての人間の中に!私たちの心の中に!

皆さんは幸福を生み出す力を持っています、人生は美しく自由であり素晴らしいものです!その力を民主主義の為に集結しましょう!世界をよりよくする為に戦いましょう!青年には希望を与え、老人には保障を与えましょう!

独裁者もこれと同じ約束をしましたが、彼らは約束を守りませんでした。彼らは自分の野心を満たして大衆を奴隷にしました!さあ、戦いましょう、約束を果たす為に!世界に自由をもたらし、国境を取り除き全人類を幸福に導くために、兵士のみなさん、民主主義の為に団結しましょう!

※英語原文はこちらをご覧なされたし。

これはやっぱり凄いですよ。現在でも十分通用しますしね。

ひょんなことから独裁者に瓜二つのユダヤ人の床屋チャーリーが、ラストシーンでこの演説をするのですが、後半になるにしたがってチャーリーから素のチャップリンが演説をしている錯覚にとらわれます。

後にチャップリンは自伝で、製作当時はホロコーストWの現実を知らなかったと告白しています。もし知っていたらこの映画は作らなかったとも言っています。ヒトラーは“独裁者”を観たらしいので、下手をすれば暗殺されていてもおかしくなかったかもしれませんね・・・。

さてさて。他にも名シーンが多いこの映画。実はオイラがこの映画で最も感銘を受けたのは、独裁者ヒンケルが風船で出来た地球儀を弄ぶシーンであります。まさに全世界を手玉に取ることを夢見る独裁者の狂気のオーラが迸っています。このシーンは観るたびに戦慄を覚えてしまいます。

チャップリンは1889年4月16日、ヒトラーは1889年4月20日生まれ。4日違いの同い年。しかも、子供の頃の境遇が似ているのも有名ですね。人生とは摩訶不思議なものでございます。

独裁者ヒンケルの地球儀遊戯。怖いシーンです。

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ブラームスの「ハンガリー舞曲No.5」に乗せて、お客さんの髭をそるチャーリー。爆笑必至の至芸です。

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あまりにも有名なスピーチ・シーン。映画史上屈指の名シーンでしょう。

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たぶん、単品廉価版も発売されているはず・・・です。

チャップリン メモリアル・エディション DVD-BOX III

販売元:紀伊國屋書店( 2010-02-27 )

定価:¥ 10,920 ( 中古価格 ¥ 12,474 より )

Amazon価格:¥ 19,800

時間:296 分

5 枚組 ( DVD )


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