緊張トライアングル+あるふぁ

この業界に身を置いて随分と時が経ってしまいました・・・。思い返せばクラシックのことなどほとんど知らず、楽譜の知識などはほとんど皆無、楽器の知識に至っては全くゼロでございました。よくこんなオイラを雇ってくれたものでございます。バブルだったんだねぇ・・・。入社まもない頃は、それはそれは初心(うぶ)ございました。それが今や仕事しながらブログ書いたり、Twitterでつぶいやいたり、鼻をほじくりながら電話応対していたり、放屁しながら接客したりと立派な不良社員に成長いたしました・・・。“初心忘るべからず” そうだ、忘れてはいかんなっ!

あれは入社2年目頃だったでしょうか?ようやく仕事に慣れ始めたのだけど、まだまだ緊張感を持ちながら日々精進しておりました。

そんな折、外国の某超著名クラシック・ギタリストが来日し、御茶ノ水のカザルスホール[1]で一夕のコンサートが催されました。たまたま招待券を頂いたので勉強がてら聴きに行ったのでした。

会場に到着すると、そこかしこに見知った方(お客さんやギタリスト)がいらっしゃっていて、恐縮&挨拶をしつつ着席。プログラムノートを読みながらコンサートの開始を待っておりました。

しばらくすると、オイラの前の席に小柄&痩せ気味&大変独特なヘアスタイルをした男性が座られました。

「ん?どこかで見たことがある方だなぁ・・・」

と、目を凝らしてビックリ!その御方は世界的な作曲家、

武満徹W先生

でした。う、うぅ・・・。緊張する・・・。

この頃は現代音楽にどっぷりハマっていた時期で、当然ながら武満先生の作品もこよなく愛しておりましたので尚更であります。とにかく失礼があってはいけないと後ろの席で小さくなりつつ気配を消しました。

更にしばらくすると、オイラの右隣にこれまた独特の雰囲気を醸し出した男性が座られました。

「ん?どこかで見たことがある方だなぁ・・・Part2」

と、見るとはなしにお顔を拝見してクリビツ!その御方は音楽評論家として名高い、

濱田滋郎先生[2]

でした。う、うぅぅ・・・。超緊張する・・・。

業界に身を置いてから、特にクラシックCDにおけるライナーノートの含蓄ある解説に常日頃から敬意を表しておりましたので尚更であります。兎に角失礼があってはいけないと息を殺して気配を消しました。

更に更にしばらくすると、オイラの左隣に颯爽としたイケメンな方が座られました。

「ん?どこかで見たことがある方だなぁ・・・Part3」

と、緊張に打ち震えながらお顔を拝見してクリビツテンギョウ!その御方は世界的なクラシック・ギタリストである、

福田進一先生

でした。う、うぅぅぅ・・・。ド緊張する・・・。

業界に身を置いてから福田先生のCDを貪り聴き、その卓越した技巧&音楽表現&レパーリーの幅の広さに、常日頃から最大限のリスペクトを抱いておりましたので尚更であります。とにかく兎に角失礼があってはいけないと呼吸を停止して気配を消しました。

遂に魔の、もとい、 緊張トライアングルが完成してしまいました・・・。まんじりとも出来ない状況の中、コンサートが始まりました。

正直、この日のコンサートの内容を覚えておりません。てゆーか、覚えていろというのがそもそも無理っす。それぐらい緊張してしまいました・・・。

前半が終わり、取りあえず落ち着こうと這々の体で座席を離れてロビーでタバコを吸っていると、ある方と一瞬目が合ってしまいました。

「ん?どこかで見たことがある方だなぁ・・・Part4」

と、鼻からタバコの煙りが出ずに鼻血が出そうになりました。その御方は世界的なジャズ・ギタリストとして名高い、

渡辺香津美先生

でした。う、うぅぅぅぅ・・・。テラ緊張する・・・。

業界に身を置く以前から渡辺先生のCDを貪り聴き、フラメンコからジャズに宗旨替えしようかと思ったほど影響を受け、常日頃から尊敬の念を抱いておりましたので尚更であります。とにかく兎に角十二角失礼があってはいけないと、タバコの煙を全て体内に収め、ニコチン色に染まった顔のまま座席に戻りました・・・。

コンサート終了後はもうグッタリでした・・・。でも、今思えばこんな体験は滅多に出来るものではありませんね。

さてさて。初心を思い出したことだし仕事しよ・・・。(おいおい、やっぱり仕事しているフリして書いていたのかいっ!)

  1. その後、日本大学カザルスホールと改名。残念ながら、今年の3月末日をもって閉館。 [戻る]
  2. ちなみにお父様は児童文学の傑作「泣いた赤鬼」の作者として高名な浜田廣介W先生です。 [戻る]
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