前立腺哀歌

2003年11月某日。当時まだ実家に住まっていたオイラは、翌日早朝出勤だったため早めに床に入り爆睡しておった。ウトウトし始めた午前1時頃、いきなり父親に叩き起こされる。「な、何?何事?」と起き上がると、苦悶の表情を浮かべた父親がこう言った。

“し、ションベンが出ねぇんだ・・・”


とりあえず車を駆り、小岩にある救急病院へと急行。途上、後部座席では父親が「うぅ、おぁぁぁ~~」と唸り続けており気が気でない。さて、一体これはどういうことか?

数年来父親は軽い前立腺肥大のため治療薬を飲んでいたのだが、この日、小学校時代のクラス会があり小岩で牛飲。居酒屋では普通に排尿出来たらしいのだが、帰宅後用を足そうとトイレに入ったところ全く出なくなってしまったのであった。排尿したいのに出せないのは確かに苦しいだろう。その間、着々と膀胱には尿が溜まり続けるって寸法だ。

カテーテルを尿道に挿入してもらって溜まりに溜まった尿は無事に処理出来たものの、これは一時しのぎに過ぎない。未だ導火線に火の付いた爆弾を抱えたままなのである。後から知ったのだが、午前5時頃にまたトイレに行きたくなり排尿を試みるもはやり一滴も出なかったらしい。さすがにオイラを起こすのは気が咎めたらしく、自分で車を駆ってまた病院に行ったそうである。

早速その日に行きつけの病院の先生に診察してもらったところ、前立腺が最大限に肥大していて完全に尿道を塞いでしまっており、早急な手術が必要との事だった。紹介してもらった病院は飯田橋の東京厚生年金病院であった。

しかし、満床だったため年内の手術は不可ということで年明け早々に施術することになった。ではその間、どうやって排尿したらよいのだろうか?

考えるだに恐ろしいのだが、丸々1ヶ月カテーテルを挿入しっ放しという状況になったのである。当時父親はまだ仕事(トラックの運転手)をしていたので相当辛かったと思う。尿道に負担がかかりっぱなしなので、後半はほとんど血尿しか出なかったらしい・・・。

そんな折、慈○医大青○病院で前立腺がん摘出のため「腹腔鏡手術」を受けた患者さんが医療ミスで亡くなるという事件が発生。同様の手術をしなければならぬ父親は大いにビビった。

手術当日は傍目にもかなりナーバスになっていたが無事成功。約2週間ほど入院して退院。

それにしても開腹をせずにどうやって手術をするのだろうか?

TURIPというお腹を切らずに患部を電動工具で掻き出して取除く方法が用いられたとの事。前立腺の形は栗の実に良く似ているらしい。で、その中心に尿道が通っているわけなんだけど、中が肥大することにより尿道を圧迫して排尿が困難になるためその部分を抉り取るのだそうだ・・・。しかし術後、恐る恐る排尿を試みると難なく迸り出る尿を見た時は歓喜&快感だったそうだ。

さて退院後、念のために大事を取り更に2週間休んで仕事に復帰。が、一つ問題が。

1ヶ月以上もカテーテルを挿入しっ放しの生活を送った結果尿道が緩みきってしまい、例えば咳やクシャミをした時、トラックに荷物を積み込む際にちょっと力んだだだけで無意識に粗相してしまうため、約1ヶ月ほど大人用紙おむつを着用して仕事をするは羽目に・・・。いと哀しきなり。

前立腺肥大は男性だけに起こる症例であり、年齢を重ねるほどに肥大しやすいわけで、統計では男性の6割がなると言われており、身体的にはかなりの部分において父親の特徴をしっかり受け継いでいるオイラは戦々恐々しているわけであり、ある日突然排尿できなくなる時が来たらという想像をすると眩暈がする・・・。

人間は健康が一番なのでありんすなぁ・・・。

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