トレモロは超絶技巧ではない(たぶん・・・)

以前、某番組に某有名ギタリストの方が出演され、ギターを弾かれる方なら誰もが憧れるFrancisco Tárrega(フランシスコ・タレガW)の“Recuerdos de la Alhambra(アルハンブラの想い出)”[1]という曲を演奏されやした。とても素晴らしい演奏で、あらためてこの作品が名曲であることを確認出来たのだけど、ちょっと気になったのが確か司会者の方が“凄い超絶技巧ですね”とこの曲に対して言ったことでござる。正直オイラは“えっ?何でトレモロが超絶技巧なの・・・”と思ってしまったのさ。

だけどその気持ちはわからんでもない。オイラも生まれて初めてこの曲を聴いた時は一人で演奏しているとは思えんかったから。なので、楽譜を見た時は想像以上にシンプルな右指の運指に感動したな。

フィンガーピッキングによるギターのトレモロはp(親指)が伴奏、トレモロ部分をa(薬指)、m(中指)、i(人差し指)が受け持ちますな。では、実際に楽譜を見てみやしょう。

“フランシスコ・タレガ/アルハンブラの想い出”の冒頭部分。貴重な手稿譜より。

“アルハンブラの想い出”手稿譜冒頭部分

基本的にp-a-m-iという指の動きを延々と繰り返すだけなのね。で、音の粒をきちっと揃えて若干速めに弾くとメロディー部分が繋がって聞こえるって寸法。このことからも特に超絶技巧を駆使しているわけではないことがお分かりでござろう。

要するにトレモロ奏法って指の動きそのものは単純なアルペジョなわけっす。

ちなみにフラメンコ・ギターでは4連ではなく5連で弾くのが一般的。運指はp-i-a-m-iになりやす。4連で弾くことに慣れている方は最初はかなり弾き辛いかもしれませぬ。

例としてPaco De Lucía(パコ・デ・ルシア)大先生の大昔のアルバム“Duende Flamenco(邦題:魂)”から、Rondeña(ロンデーニャ)の形式による“Doblan Campanas(邦題:鐘が鳴る)”のトレモロ部分を見てみやしょう。(譜例は瀬田 彰先生が採譜されたものを使用)

“パコ・デ・ルシア/Doblan Campanas(鐘が鳴る)”のトレモロ部分

“パコ・デ・ルシア/Doblan Campanas(鐘が鳴る)”のトレモロ部分

フラメンコ・ギターのトレモロはカンテ(歌)を模しているので、メロディーにコブシが入ってちょっとだけ複雑。でも、基本的に右指は一定の指使いなので慣れるとそんなに難しくないっす。

とは言え、単純な指の動きにもかかわらず、トレモロの粒が揃わず悩まれている方が意外に多くいらっしゃるのも事実。なので生意気にもオイラがアドバイスっ!とにかく練習時は

めちゃんこゆっくり弾くべしっ!

イライラしてストレスが溜まるくらいゆっくりよっ!

もし、ゆっくり弾いても粒が揃わなかったとしたら、速く弾いても永遠に粒は揃わぬ。これは必然でござる。ゆっくり弾いて粒が揃ったら、少しづつスピードアップをすれば良ろし。そうすれば確実に粒の揃った美しいトレモロを奏でられるはずでっす。健闘を祈りやす。

  1. ちょっと補足。Alhambraは本来“アランブラ”と発音されるのが望ましいのでありんすが、日本では“アルハンブラ”と表記されることが多いのでここでもそれを踏襲するざんす。 [戻る]

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Luzia

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  1. shun

    こんにちは、フラメンコギターを去年始めてからしばしば拝読しています。
    今パコ師匠のMi Inspiracionを練習してますがトレモロ部分で手こずっております。。。
    右手のポジショニングにコツなどはありますでしょうか?
    もしよろしければお聞かせ頂けると幸いです!

  2. Luzia

    @shun様
    コメントをいただきありがとうございました。

    >右手のポジショニングにコツなどはありますでしょうか?
    ワタクシのような素人がお教え出来るかどうか不安なのですが・・・。まずはこの動画をご覧くださいまし。

    パコ師匠の若き頃のRondeña、“Doblan Campanas(鐘は鳴る)”でございます。1:05からトレモロが始まります。フラメンコ・ギタリストはたくさんいらっしゃいますが、パコ師匠ほど左右の手のフォームが美しい方はいらっしゃらないと思います。

    ご覧いただくとおわかりのとおり、右手のフォームが常に一定で全くギクシャクしたところがございません。P指はフラメンコのトレモロの場合、ほぼアポヤンドで弾きますが、その時に多少動くことはあっても、手の甲はほとんど動いていません。右手のフォームが安定している証拠です。

    また、粒の揃ったトレモロを弾こうと思いますと指もリラックスした状態でないとリズムがギクシャクしてしまいます。最初はかなり遅いテンポで練習するのが良いと思います。

    指を動かす起点は指の根元、つまり、第三関節(指の先端部を第一関節とした場合)になります。

    練習時は指をかなり大きく動かして弾きますとかなりリラックスした状態で弾けます。それこそ、目的の弦の隣の弦も弾いてしまう位でもいいかと。トレモロというと指を細かく動かさなければならないというイメージが強いので、無意識に力んでしまいがちだからでっす。

    是非、お試し下さい!

  3. shun

    お忙しい中早速のお返事ありがとうございます!
    なるほど、確かに師匠の手のフォームは完全に安定しておりますね…私は親指に合わせ手ごと上下に動いてしまっておりましたので改善してみたいと思います。

    また、指の起点と「大きく動かす」事については目から鱗でした。
    ご指摘の通り「細かく動かさなければ」というイメージで取り組んでおりましたので意識して練習してみたいと思います。

    非常に勉強になりました!図々しいお願いにも関わらずご丁寧な解説を頂き誠にありがとうございます!

  4. Luzia

    @shun様
    ワタクシのようなスチャラカギター弾きが偉そうなことを書いてしまい恐縮でっす。

  5. イーグル

    教えてください
    ダブルトレモロ? 
    フラメンコのグラナディーナにはあると聞きましたが…(エレキギターの道具ではなくて) 
     
    トレモロで爪はどうされてますか?
    私は爪と弦のカチカチ音がイヤで、指先同じ長さまで切っちゃいました キッチンペーパー寿司巻きでサドル前の弦に挟んで響き消すとトレモロがシャカシャカ音だけで音階になってなかったから… 今はアポヤンド気味に音出し… 
    拝 

  6. Luzia

    イーグル様

    コメントをいただき誠にありがとうございまっす。

    “ダブル・トレモロ”というのは多分、正式な呼び方ではないと思うのですが、例えば1弦と2弦、2弦と3弦などのように、2本の弦を同時にトレモロする奏法の事です。まぁ、あまり使われることは無いのですが・・・。

    山下和仁さんのアレンジによる「ドヴォルザーク/新世界より(全曲)」の第2楽章「ラルゴ」には“トリプル・トレモロ”(つまり、3本の弦を同時にトレモロ)という変態技が出てきまっす。

    ワタクシはトレモロはごく普通にアルアイレで弾いていまっす。(親指はアポヤンドすることが多いでっす)

    また、ワタクシは先天的に鷲爪(わしづめ)なので、めちゃくちゃ爪は短くしていまっす。

    以前、ワタクシの爪写真を載せたことがございますので、ご参照下さい。

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