Villancico de Navidad

21日に譜読みミスの事を書きましたが、今日はクリスマス・イブなのでクリスマスにちなんだ譜読みミスのお話をいたしましょう。いや、譜読みミスと言うより世界中のクラシック・ギタリストが気づかなかった世紀の大発見というべきか・・・。さて、今日のブログタイトル“Villancico de Navidad”は日本語に訳すと“クリスマスの歌”でございます。

クラシック・ギターを嗜む方にとっては大変重要なギタリスト作曲家、Agustín Barrios(アグスティン・バリオスW)のとても愛らしいギターソロ作品です。

難曲が多いバリオス作品の中では比較的易しい作品なのでレパートリーにされている方も多い作品でしょう。古くから知られる数種の楽譜を見ると途中2箇所、1弦~5弦の開放弦だけで演奏されるパッセージがあります。

例1:全音楽譜出版社 ヘスス・ベニーテス編/バリオス・マンゴレ ギター作品集第2巻より

全音版“クリスマスの歌”

恐らくこの作品を一番最初に録音をしたのは巨匠John Williams(ジョン・ウィリアムズ)かと思われます。ジョンは2度この作品を録音していますが、両録音とも上の楽譜のように演奏しています。

ということもあって、国内外のギタリストは皆これに倣って演奏・録音をされてきました。

しかし、この部分に違和感を抱かれた兵庫県在住のギタリスト、松本安弘さんが現代ギター誌1994年10月号の読者投稿ページ“シエスタ”に寄稿された一説はその後、この作品の演奏・録音・出版に至るまで大きな影響を与えました。

さて、ここで私のとっておきの秘話を披露いたしましょう。皆さんはバリオスの〈クリスマスの歌〉という曲をご存知でしょうか。楽譜を購入したのは、かれこれ10年以上前になるかと思いますが、むずかしい曲集の中にあって、私にもようやく弾けそうなこの曲を練習していてどうにも音楽として納得できないところが2ヵ所ありました。悩んで楽譜とにらめっこすること10分足らず「ハッ」とひらめきました。およそ前後の脈絡のない開放弦のアルペジョにハーモニックスを用いることによって、前出のメロディーが聞こえてきたのです。私は、まさに鬼の首を取ったような気分になり「これは自分一人の秘かな喜びにしよう」と決め今日まで封印してきました。敬愛するジョン・ウィリアムズですらレコードに聴く限り気付いてないようですし、プロ・アマ含めそのように弾いた方を私は知りません。ともあれ、ぜひお試しください。自然ハーモニックスの響きがクリスマスの鐘のイメージを連想させ、あたかもそれがため、バリオスはこの曲を作ろうと意図したのではと考えてしまうほどです。

僕もこの説を読み、実際に音を出して確認した時は目からウロコがボロボロ落ちると同時に大変感動した記憶がございます。

この説以降にバリオス作品集は国内外でいくつか出版されていますが、僕が知る限りほぼ全てハーモニクス・バージョンで出版されています。

例2:現代ギター社 鈴木大介・監修/バリオス選集1より

現代ギター社版“クリスマスの歌”

全てナチュラル・ハーモニクスです。使用する弦も例1の全音版と全く同じです。どれほど印象が異なるか実際に音を比べてみましょう。

ジョン・ウィリアムズによるハーモニクス無しバージョンの演奏(1:11~)。(音声のみ)

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Mikiさんいう女性ギタリストによるハーモニクス有りバージョンの演奏(1:17~)。

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明らかにハーモニクス・バージョンの方が正解でしょうね。では、なぜ初期の楽譜にはハーモニクスの指示がないのでしょう?

同じ部分が2箇所とも開放弦のパッセージになっているとなると、単なる誤植ということは余り考えられません。そう考えると断言は出来ませんが、恐らくバリオス自身の自筆譜にハーモニクスの指示が書き忘れにより抜け落ちている可能性があります。

またはバリオス自身はハーモニクスのことは考えず、初めからこのパッセージを書いたか・・・。それが偶然にもハーモニクスにすると前出のメロディーと一致してしまった・・・。いや、やはりこれは無いでしょうね。

この部分を例1の楽譜のとおりに弾いてもメチャクチャな音楽にならなかったのは偶然とはいえ不思議です。だからこそ松本さん以外のギタリストが長らく気づかなかったわけで・・・。

これはある意味イエスの福音なのかもしれませんね。

¡Feliz Navidad

    • のぶ
    • 2016年 5月 3日

    違うと思いますね。自然ハーモニクスでこの曲のメロディーをなぞらえることに成功したのは確かに驚きですが、この部分はツリーにぶら下がる飾りがカチャカチャいう音を表現したものと思われます。もし例2が正しいのなら、あとに来るEの音があまりにも異質すぎます。不協和音すぎるのです。ハーモニクスするとしたら明らかに12フレット上での開放弦ハーモニクスだと思いますね。ボクには福音どころか勝手な改竄にしか聴こえませんでした。

    • Luzia
    • 2016年 5月 3日

    @のぶさん
    貴重なコメントをいただきありがとうございました。

    >この部分はツリーにぶら下がる飾りがカチャカチャいう音を表現したものと思われます。
    >もし例2が正しいのなら、あとに来るEの音があまりにも異質すぎます。

    説得力があり、感服いたしました。ますます謎が深まってしまいました・・・。

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