時にはオリジナルを凌駕することもある
以前、クラシック・ギターの世界ではいわゆる“原典版”が流行っているみたいなことを書きましたな。(ここ)これは大変喜ばしいことでござんす。「あぁ、ここは本当はこうなっていたのかっ!」、「やっぱりここはミス・プリントであったのだなぁ」みたいな発見がありまするからね。さて、ギターを弾かない(もしくは弾けない)作曲家のギター作品はほとんどの場合、演奏不能な箇所が多々ありまっす。
なので曲を依頼、もしくは献呈されたギタリストが楽譜を校訂するのが常でありまっす。
弾けない箇所の変更や「ここはこうした方がより良くね?」っていうことは作曲家と相談の上でやるんだと思うけど、中には変更したことによりスンバラシイ曲になることもござるな。
例えば、Mario Castelnuovo-Tedesco(マリオ・カステルヌオーヴォ=テデスコW)の“Capriccio diabolico(悪魔の奇想曲)”というNiccolò Paganini(ニコロ・パガニーニW)を讃えたギターソロ作品がありんす。
なのでこの作品にはパガニーニ作品のパスティーシュ(模倣)がそこかしこに取り入られておりんす。
で、この作品が有名になった(あくまでもギター界で)のはこの曲を献呈された大巨匠Andrés Segovia(アンドレス・セゴビア)の演奏・録音によるわけであり、セゴビア大先生の校訂による楽譜が1967年に出版されて以来、現在に至るまでC=テデスコ作品の人気定番作品になっているのは皆様ご存知のとおり。
そして、大変喜ばしいことにもう一つの人気作品である“Tarantella(タランテラ)”と共に2006年にいわゆる原典版が出版されたのでございます。んで、クリビツしたのは“悪魔の奇想曲の”ラスト部分がオリジナル楽譜とセゴビア大先生校訂の楽譜と全く違うことだったのでございやす。
セゴビア大先生はエンディング寸前にパガニーニの名高い“ラ・カンパネッラW”のメロディーを取り入れているのだけど、オリジナルは“ラ・カンパネッラ”と表示されているもののE(ミ)音を鐘の響きに見立てたシンプルなフレーズになっておる。
<セゴビア版>
<オリジナル版>
これは多分セゴビア大先生のアイデアだと思うのだけどすんげぇナイスだと思う。ハッキリ言ってオリジナルより全然こっちの方が(・∀・)イイ!! とオイラは思う。もしオイラがこの曲を弾くとしたら、少なくともラスト部分はセゴビア大先生の版を使用するっ!
時にはオリジナルを凌駕することもあるのです。
前にも載せたけど山下和仁さんの演奏をどうぞ。セゴビア版で演奏されています。
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悪魔の奇想曲を演奏したいのですが、セゴビア編の赤い表紙のものは現代ギターショップにはなさそうなので他を探しているのですが、この楽譜
http://www.gendaiguitar.com/index.php?main_page=product_info&products_id=131663
はどちらの版なのかご存じないでしょうか?
@たくさん
Frederic Ziganteさん監修の“20Th Century Italian Composers”に収録されている“悪魔の奇想曲”はセゴビア版でっす。
中身を見たことがないのですが(激汗)、これまでのジガンテさんの信頼できる仕事ぶりを見ると、恐らく誤植等の修正はされているかと思われまっす。