1980年10月21日に音楽プロデューサーである原田力男Wさん主催による“第35回Private Concert 山下和仁ギター・リサイタル 2~演奏表現の新しい地平 7(於:いわさきちひろ美術館)”が催され、その際、委嘱作品として当時、新進気鋭の作曲家であった吉松隆さんの“Litmus Distance(リトマス・ディスタンス)”という曲が発表され、山下和仁Wさんの才能に惚れ込んだ氏にとっては初めてのギター作品であり、“Bedouin in Acid(酸性のベドウィン)”と“Bedouin in Alkali(アルカリ性のベドウィン)”の2曲から成るのであり、いかにも吉松作品らしいタイトルであり、先日久し振りに聴いたらすんごく良い曲だということをあらためて認識したのであった。
ブラジルの巨匠、Juan Calos Laguna(フアン・カルロス・ラグーナ)による演奏動画。
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↑ の演奏動画をご覧いただけたらお分かりかと思うのでありんすが、エスニック且つ幻想的な美しい作品でござんす。この作品は現代ギター社にてギターピース、もしくは“吉松隆ギター作品集第2集 風色ベクトル”に収録される形で出版されておりんす。ギターピース版に作曲者の吉松さんによるこの作品のノートが記載されちょりますので引用しませう。
夢の中に、淡い色をした青い砂漠と赤い砂漠とがある。そこに、乾いた瞳を持ったベドウィン(遊牧民)たちが棲んでいる。
酸性のベドウィン、そしてアルカリ性のベドウィン。つまりはリトマス試験紙の上の架空の砂漠らしいのだが。彼らは砂の上に腰をおろし、ギターによく似た弦楽器を抱きかかえると、遠い幻のような不思議な歌を歌い始める。私はそれを採譜し、リトマスに寄せる遠景(ディスタンス)を想う。
とのことでござんす。
オイラが初めてこの作品を聴いたのは山下和仁さんの隠れ名盤、“モダン・コレクション”という全て日本の作曲家が書いた現代ギター作品のみを収めたアルバムでござんした。[1]その直後にギターピースが出版されたと記憶しちょりんす。
あの山下さんのために書かれた作品でござんすから、超絶的に難しいと思われる方もいらっしゃいますろう。でも、この曲は難曲ではありんすが、グリコ(注:お手上げ)ではありませぬ。
1曲目の“酸性のベドウィン”は⑥=D、2曲目の“アルカリ性のベドウィン”は⑥=C♯、⑤=G♯、④=C♯という変則チューニングを使用。しかも、“アルカリ性のベドウィン”はペグに鈴をぶら下げて演奏するというなかなか面白い趣向が凝らされていたり、後半はパーカッション奏法まで出てきてラヴリー。
<酸性のベドウィン~冒頭部分>
<アルカリ性のベドウィン~冒頭部分>
<アルカリ性のベドウィン~パーカッション奏法部分>
1曲目と2曲目ではチューニングがガラリと変わってまいますので、実演ではラグーナさんのように2台のギターを準備しておく方がスムーズかもしれぬ。
こんないい曲なんですが、国内盤での録音は山下さんしかない・・・。海外でも一人ぐらいしかおらなんだ。コンサートで演奏している方は何人かいるんですけどね。もっと弾かれていい曲だと思うけどなぁ・・・。
- 発表当時は当然LPレコードでござんす。その後、CD化。 [戻る]
聞きたいCDが手に入らない!あっても高すぎる!ストリーミングサイトにもない!
どうしましょう
@AAAさん
吉松さんのギター作品の録音はそれほど多くないのですが、ほぼ廃盤になってしまっていますね。山下和仁さんのアルバム、「風色ベクトル」はAmazonで¥6,000を超えてしまっておりますし・・・。
YouTubeにいくつか演奏動画と音源がありますので、ご参照下さい。
http://bit.ly/2q1Lg82